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社会技術
社会技術とは,社会問題を解決し,社会を円滑に運営するための「技術」である.ここでいう「技術」とは,広い意味での技術であり,工学的技術だけでなく,法制度や経済制度,教育,社会規範などを含む。
たとえば建設現場で,作業員がヘルメットに赤・青・黄の信号のようなシールをつけているのをみたことはないだろうか。あれは,命綱を付け忘れるなど,安全規則を破ったときには,それが上司であってもヘルメットのシールを1枚剥がす約束になっており,3枚とも剥がされた場合には,所定の期間,建設現場には入れなくなる仕組みになっているのである.誰もそんな恥ずかしい目には遭いたくないので,安全規則を破る者はいない.
命綱やヘルメットといったハードウェアだけでは工事現場の作業員の安全を完全に守ることはできない。命綱やヘルメットなどのハードウェア対策は,3色シールのルールに補完されてはじめて,工事現場の作業員の安全を守る実効的な「技術」となるのである。
他にも,「飛び出すな,車は急に止まれない」という標語や,「家に帰ったらうがいをする」「食事の前には手を洗う」という習慣も,信号やガードレール,保健施設などのハードウェアを補完する有効な問題解決策となっており,よくできた技術といえる.
科学技術を社会問題の解決に活用することは有効であるが,科学技術だけで社会問題を解決できないことも明らかである。このように,技術という概念を
広く捉え,科学技術と社会制度をうまく組み合わせて社会問題を解決しようとする技術が「社会技術」である.
産業のための技術が産業技術であり,社会のための技術が社会技術である。個別技術の総称として産業技術という言葉が使われるのと同様に,社会技術も「社会技術と呼ぶことが相応しい個別技術」の総称を表す。